第4章 先生だって恋します。【澤村大地】
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翌日の3年生の授業中、前日の男子バレー部の顔ぶれを見つけた。
(あ、昨日のバレー部の……澤村くんと菅原くん、だったな)
今までは授業の進行を考えるだけで精一杯で生徒の顔と名前が一致せず名簿に頼っていたが、前日の男子の練習風景が印象に残った所為か、2人の顔と名前ははっきり覚えていた。
「では、次は問2ですね。分かった人はいますか?」
私の問い掛けに澤村くんがただ1人、真っ直ぐに私の目を見て挙手をしていた。
「では、澤村くん」
「はい。Bの『実際は』です」
「はい、その通りです。ありがとう」
とても真面目で頼りになる生徒。
その印象は、前日の練習風景を見ても明らかだった。
週3回の授業を見ていても分かる。
授業中は私の目を見て授業を聴いてくれている為、彼とよく目が合う。
黒板に板書をしていて背中を向けている時ですら、澤村くんの視線を感じる程だ。
(他の科目の授業中もこうなんだろうか……)
澤村くんは、授業の課題の回収をいつも進んでやってくれた。
クラス全員分のノートを職員室に持ってきてくれた時、
「いつもありがとう。本当に助かってるよ」
と笑顔で感謝を伝えたら、少し顔を赤くさせて、
「苗字先生も、いつも俺たちの為にありがとうございます!」
とニカッと笑い言ってくれた。
ハキハキした口調と屈託の無い笑顔が高校生らしくて微笑ましい反面、低くても通る声や頼り甲斐のある大きな背中が大人びても見えた。