第4章 先生だって恋します。【澤村大地】
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「武田先生、苗字先生、ちわーっす!集合!!」
「ちわーっす!!」
「皆!お疲れ様」
「ちっ、ちわっす……!」
主将に続いて部員たちが素早く集まってきて、勢い良く頭を下げた。
運動部では無かった私は、この体育会系な挨拶に未だに慣れなかった。
女子とはまるで異なる大迫力。
ましてや、鍛え上げられた体格の良い男子高校生たちだ。
155センチの私には、彼らは大きすぎて見上げる必要がある程。
武田先生みたいに堂々としていなければ。
自然と拳に力が入った。
「皆、今日は僕が教員指導をしている、新任の苗字先生に来てもらっています。苗字先生は今年から女子バレー部の顧問をしています。では、苗字先生から一言、お願いします」
武田先生が急に私に話を振った。
「えっ!えっと……み、皆さん……」
部員全員からじっと見られて、感じる圧が半端無い。
距離感の近さが、授業中よりも遥かに緊張した。
「……女子の顧問の苗字です……。その……練習、が、頑張ってください……ね」
(……絶対スベったよね、私……)
「あざぁーすっ!!」
「おし、練習戻れー!!」
「ウッス!!」
「初めてですから緊張して当たり前です。次からは生徒たちの前で緊張しないようにしましょう。授業と同じですよ」
「は、はいっ!」
武田先生のアドバイスは的確で、言い方も優しい。
こんな教師に私もなりたい、と思った。