第18章 美化委員の特権【北信介】
『土日どっちか出て来てやるか……それとも今からやるか……
どっちがええ?』
帰宅部である私にとって、お昼まで寝てられる休日にわざわざ学校に出て来るなんて論外。
ましてや、他の委員会メンバーの連絡先なんか知らんであろう北くんが、休日に連絡を取り合って招集を掛けるなんてしない筈。
せやから土日に変更した所で、結局は北くんと二人きりなのはきっと変わらへん。
『……ふっ』
黙って考えとると、目の前の人から吹き出す笑いが聴こえた。
『何?何で笑ろてんの?』
『おもろい顔やった』
『失礼やな!いま推理中や!!』
『俺はどっちでもかまへんで』
それやったら、金曜日である今日、やってしまった方がマシやな。
大変な事はとっとと先に終わらしておこ。
私はそう思った。
『おーし!決まったで!!』
『今日やるんやろ?』
『何で解ったん……!!??』
『さぁ?なんでやろな』
なんや悔しいな。
“俺の知らん事なんか無いわ”
みたいな顔して……。
『ほれっ。早よ体操着に着替えてきぃや』
『ふんっ』
納得いかんし腹立つけど、しゃあない。
この男は、一般人より何枚も上手なんや。
なんやかんやで他の委員会メンバーが集まらん事はうまく流されて、二人だけのプール掃除は始まった。
✴✴✴
「ほんまにあつーーい!!」
プール底に生えた約一年分のコケをデッキブラシで擦り落とす作業は、まんま全身運動。
正直、プールの授業よりも疲れる。
加えてこの暑さ。
「少し休憩でもするか?」
「したいしたいしたーーい!!」
北くんはプールサイドにあるベンチに座った。
私はそこに、一人分の隙間を空けて並んで座った。