第17章 ラブシック・ハイ(後編)【宮治】
「……俺と名前のファーストキス、今のにせぇへん?」
キスだけでも卒倒ものなのに……さりげなく呼び捨てで呼ばれてドキドキが止まらへん。
「この前、教室で無理矢理してもうて……嫌やったやろ……?」
また頭を撫でながら、治くんは言うた。
思えばあの時のキスが無ければ、結果は変わっとったかもしれない。
「……治くんとやったら、全部ファーストキスになる」
いつだって治くんは、私にキッカケをくれる。
「これから、何十回、何百回、何万回しても……
いつでもファーストキスみたいに、幸せとドキドキが止まらへんよ」
初めて話し掛けてくれた時も……
部活の用事に着いてきてくれた時も。
アイス屋さんでの事も……
忘れ物を取りに行った教室でも。
それから、今日の試合も。
治くんは、いつでも好きになるキッカケをくれた。
私の気持ちを、引き出してくれた。
「もっともっと名前の事、好きにならせて?
もっともっと俺の事、好きになって?
もっともっと2人一緒に“恋の病”が酷なって……ほんで……」
只でさえ近い距離を、更に縮めてくる治くん。
シャンプーのええ匂いが鼻先をくすぐって、手の甲に重なった大きな手から体温を感じ取る。
そうや、治くんの言う通りや。
これからもずっと……“恋の病”のままでええ。
2人ともいつまでも、病的にハイでええ。