• テキストサイズ

【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第17章 ラブシック・ハイ(後編)【宮治】




「そこまでや」


甘い空気をプツッと切る、冷静な声。

治くんに注いでいた視線を声の主である信介くんに向けると、急に現実感が戻ってくる。



「俺……名前のコト狙っとったんに!!」

「うっさいわ、侑!黙っとれ!!今ええ所やっ!!」

侑くんと銀島くんが、小さい音量ながらも力の籠った声で話してた。

それに気を散らす事なく、目の前の治くんは信介くんを心配そうに見つめる。




「ほれっ。バレー部も吹奏楽もチアも。皆、部屋戻り」

「「えー!!」」

持ち前の統率力でギャラリーを部屋へと誘導していく信介くん。

ほんまに、どこまでも優しい信介くん。
人払いをする彼の顔は、柔らかく笑っていた。



「……あの、信介、くん」
「なんや?名前」


「……ご、ごめんなさい」


罪悪感を抱いた事への、罪悪感に苛まれる。

形の上では、信介くんから治くんに乗り換えたという事実があって、また信介くんを傷付けてもうたという不安に駆られる。




「……名前、それはちゃうで」
「え……?」


「俺は……お前がしっくりくる相手が治で、嬉しいんや」



元彼女のこんな所を見せられて、怒る人かて沢山おる筈。
なのに信介くんは、満足そうに優しく微笑んでいた。



信介くんの優しさは、海みたいに深くて……

今まで伝えられへんかった感謝が溢れた様に、目元に溜まる。



「あ……!ありがとう……!」

溢れだした嬉し涙が、目からゆっくりと零れ落ちた。


「北さん……ありがとう、ございます」

治くんは驚きながら、ゆっくりと頭を下げた。




「そや。一階のロビーなら誰もおらんのとちゃうか?」

野次馬の如く集まった人たちに、部屋に戻るよう手振りを送りながら、信介くんが言うた。



「就寝時刻までには、絶対戻るんやで?」

信介くんは、また笑っとった。

/ 190ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp