第17章 ラブシック・ハイ(後編)【宮治】
「私な、仕切るのが忙しくて……まともに応援に参加できひんかったんよ」
今は、治くんへの恋心は仕舞っておく。
「でも……治くんがサーブ打つ時、伝えなあかんって思った。
私の……応援しとるよ、って気持ち」
でも、いつかは……“好き”の気持ちも伝えるよ。
そんな事を考えながら、治くんの目を見た。
「名前ちゃんの気持ち、ちゃんと届いたで。最高の応援、ありがとうな」
ほんのりと笑てくれた治くんに、私は勝手に顔が綻んだ。
「……俺、この春高終わったら……名前ちゃんに伝えたかった事があんねん」
「え?何?」
一緒のタイミングでお風呂に入っとった人たちが、空気の違う私たちに気付いて、「なになに?」と面白がって集まってくる。
「……また天然爆弾投下されそうやから、捻らずに言うわ」
水分を少し含んだお風呂あがりの治くんの髪が揺れて、すごく色っぽい。
「俺、名前ちゃんが好きや。女の子として」
いつも重そうやった瞼が開いて、綺麗な瞳が真正面から私を捉えた。
「流石に判ってたとは思うけど。それと、教室の時の事……ほんまにごめん。
俺、焦ってたんやな。名前ちゃんの事……傷付けてもうた」
周りにおる人たちの事は、気にならんかった。
そこには信介くんもおったのに。
私には、治くんしか見えてへんかった。
たぶん治くんも、私しか見えてへんかった。
2人だけの世界になった気がして……
周りの見えない、ハイな気分の波が来る。
「名前ちゃんが、罪悪感から北さんとの別れを選んだのが……解ってもうた」
「……治、くん」
彼の口から出た信介くんの名前に、一瞬胸が締まる。
「けど何がなんでも、“好き”て伝えたかった。名前ちゃんが……拒んでも」
今は、治くんへの恋心は仕舞っておく。
そう決めた筈やったのに……
「私も治くんが……むっちゃ好き」
それなのに……
どうして、引っ張り出してまうの……?