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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第16章 ラブシック・ハイ(前編)【宮治】




***


ツムのクラスで初めて話しかけてから、数週間経つ。

春高出場が決まって、いつも通り部活に向かおうとした放課後、たまたま廊下で名前ちゃんを見かけた。



「名前ちゃん、これから部活?」

「あ、治くん。んーとね、練習の前に部の用事で……」

「へぇー。なに?」

「楽器関係以外の消耗品の買い出しとか、コーチしてくれとる外部の先生への謝礼金振り込みとか、部で作ったTシャツの受け取りで出かけんねん」

「げー。それ全部、部長の仕事なん?」

「うん。歴代部長、そうしてはったらしいよ」



顧問は演奏の指導があって出来ひんから、と言いながら、TO DOリストを確認する。


どう考えても只の雑用。

お節介やけど、楽器の練習とか他の人と合わせる練習とかせんでええんやろか?



「ほな治くんも、バレー頑張って」



俺の好きな、ふんわりとした笑顔。



「……うん」

これを見せられると、何も言えなくなる。


足早に下の階に下りていく名前ちゃんの小さい背中を、見えなくなるまで見つめていた。

揺れたスカートから綺麗な足がちらついた瞬間、思う。



北さんは全部、見たんやろか……?


名前ちゃんの足……

名前ちゃんの裸……

名前ちゃんの全部を。



北さんには、この笑顔、見せてたんやろか?

北さんの事、まだ好きやったりするんやろか?



名前ちゃん……教えてや……?





───俺は今……何しとんのやろ?



気付けばその辺におったツムを捕まえて、「風邪気味や」ゆうて仮病使て部活を休んだ。

春高控えた大事な時期に、ほんまに勝手しとるのは解っとる。
吹奏楽部の練習にお節介焼いとる場合やない。




おまけに。

そないに仲良くなれてへん同級生を追いかけとる。




「待って」

校門を出る寸前の彼女の腕を、後ろから掴んだ。



「……え、治くん?どないしたん?」



びっくりした顔が可愛くて、そのまま腕の中に収めてしまおうかと思た。



「俺も……一緒に行ってええ?」

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