第16章 ラブシック・ハイ(前編)【宮治】
「おっ、そうなん?ごめんな、応援してくれとんのに知らんで」
「部長はこの7月からで……まだ3ヶ月ちょっとしか経ってへんから」
何か縁があるような気がした。
彼女との間に見出したこの小っさい繋がりを、俺は掴んで離しとうなかった。
「んで?学校でなにヤラシイもん読んで喜んでんの?“onon セックス特集”?」
「アハハハ!見られた!やばー!!」
「吹部部長サンも、キョーミあるん?」
俺は彼女に話を振ってみた。
他の女子らとは、雑誌を見つめる彼女の目が違ったから。
「あるよ。男の子の気持ち、知りたいからね」
学校で読むには、不真面目で危うい雑誌。
けど彼女は、真面目な顔で真っ直ぐに俺を見た。
さっき見せた天然な一面を拭い去る様な、熱の入った真剣な目。
「へぇー。意外やな」
北さんの元カノっちゅう事実が頭をよぎった。
この子は北さんと、こういう事したんやろか?
なんて……余計なお世話でしかないけど。
「なぁ。自分……名前教えて?」
「苗字 名前です。よろしくね、宮治くん」
今でも不思議な位に憶えとる。
おもろい子見つけたわ、っちゅう高ぶり。
それとは対極に、安心感と癒しをくれる……
彼女のふんわりとした柔らかい笑顔。
名前ちゃんを意識し始めてから、廊下で顔を見る機会が増えた。
隣のクラスやしきっと前から見かけてたんやろけど、俺のセンサーの反応の違いだった。
「名前ちゃん、元気しとる?」
「ふふっ、治くん。昨日も会ったやろ?」
何度見ても綺麗な足に目がいってまうし、髪から香るむっちゃええ匂いには、会話するようになってから気付いた。
北さんて、こんなええ女と付き合うてたんやなって……やっぱそういう目でも見てもうた。