第16章 ラブシック・ハイ(前編)【宮治】
雑誌を広げてキャイキャイ言うとる女子5人組。
その中に、彼女はおった。
「それ、何読んでんの?」
俺が話しかけると、その子らはこっちを見て固まった。
「治!……くん!が、ウチらに話しかけてきとる!!」
「うわぁ、やばっ……むっちゃイケメン!」
「うぇーい、ありがとう」
「おんなじ顔しとんのに、俺にはイケメンて言うた事ないんですケド!」と、おんなじ顔の誰かさんが騒ぐ声が後ろから聴こえた。
目当ての彼女は俺を見て、何故か狐につままれた様な顔をしとった。
「……侑くん?昼休み中に、髪染めたん……?」
それが彼女からの、初めての言葉やった。
超絶天然ボケをかました彼女に、他の女子からきっつい突っ込みが入った。
「なんでやねんっ!突っ込みどこ多すぎやけど、最低でもこのイケメンオーラで判れやっ!!」
「侑の双子の、治くん!1組の!性格イケメンの方やで!!」
「たまーにドカンと天然爆弾落とすんやから……侑と間違えるとか、治くんに失礼やん!!」
「なにそれ、酷ない!!??」
また後ろからツムの突っ込みが入った。
基本的にはいつも女子からキャーキャー言われとんのに、同じクラスの子は随分手厳しい。
どーせクラスの女子に日常的にセクハラでもしとんのやろ。
こいつの普段の行いが悪いんやなぁ、と思いながら、彼女の新鮮な反応に俺は気をそそられた。
高校入ってから、俺とツムの見分けをつけてもらえるようにと別々の色にカラーリングした髪。
加えて、まあまあ有名な俺ら。
自分で言うのもなんやけど。
俺ら双子の判断ができひんのは、稲荷崎(ここ)やと、この子が初めてやった。
「ごめんなさい!お、治くん……やんな?知っとる知っとる、知っとるから……!」
「アンタ、運動部の応援しとる吹奏楽の部長……よう務まんなぁ」
「バレー部とも、夏にIH一緒に行った言うてたやん」
図らずも、友達女子から重要情報ゲット。