第2章 彼女の勘違い【澤村大地】
「じゃあ、私の失恋、勘違いだったんだね」
「そうだな完全に」
「そっか……そっか」
頷きながら、苗字は勘違いで空けたピアスを触った。
「じゃ、俺からもいいか?」
「えっ?」
「俺も苗字が好き」
「ふぇっ!?」
「ははっ、何だよその反応」
「だって、だって……ええー!?」
苗字は再び顔を紅潮させる。
「私っ、入学してからずっと……澤村くんの事見てたから……嬉しくて」
「俺も嬉しいよ。あの日から、俺も苗字の事が好きになった。気持ち伝えてくれて、ありがとうな」
「……私、今まで何か成就した事って無くて。中学の部活も恋愛も、高校もレベル下げて烏野に来た」
「うん」
俺は少し涙ぐんでいる苗字を、柔らかく抱き締めた。
「だから澤村くんに彼女いるって聞いたときも、いつもみたいに諦めるのかなって思ってた」
「うん」
「でもね、これからも人生諦め続けるんだって思うと……そんな自分変えたくて、それで……」
こっちを見上げた苗字に、俺は優しくキスをした。