第15章 あたりまえ【北信介】
「……ぁ、あ……信ちゃ……」
「口、動かすなて。この時期はちゃんと手入れせな」
信ちゃんの真剣な目、丁寧な手つき。
この距離の近さに、心臓の鼓動がやかましい。
ああ……やっぱ信ちゃんが大好き。
信ちゃんの前やったら、実は私、アホのままがええんちゃうかって……
勘違い、してまう……。
「出来たで」
「ぁ……ありがとう」
「こまめに塗っとくんやで」
私から離れた信ちゃんの表情は、いつも通り涼やかで何一つ変わらない。
少しくらい照れたり、「女子や」って意識したり、何もないんやなぁ。
なんやろ……悔しいなぁ。
信ちゃんの事、振り向かせたい。
「……あ、あんな……信ちゃん」
「何や?」
声を……振り絞るんや。
「……あ、私……信ちゃんの事……好き、や」
……勢いで告白してもうたー!!!!
やってもた!!!!
好きなタイプ聴くだけやったのに、私、アホすぎちゃうか!?
信ちゃんの前やとアホが加速してまうんやろか……!
「……」
何なん、この間!!
まぁ信ちゃん、困らしたの私か……。
あー、どないしよう……!!
でも、いくつも階段飛ばしてもうたけど……いつかは伝えたかった気持ち。
ほんまはまだ言うつもり無かったけど、届いて欲しい……!
「ふっ。名前、何言うとんねん」
……ああ……笑われてもうた。
「アホな事言うてへんで、学校行くで」
……ああ……やっぱ私の事、無理なんや……
「……うん」
信ちゃんは私の事、女の子として見てない。
解ってたやん、そんなん。
それなのに……
なんで涙が……出てくるんやろ……?