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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第15章 あたりまえ【北信介】




***


私が信ちゃんを好きな理由は沢山あるけど、好きになったキッカケは小学3年生の時の事やった。



『名前って男みたいやんな!髪短いし、いっつもズボンやし、遅刻ギリやし!!』
『怪力超人め!!ランドセル黒く塗ったろか!?あはは!!』


ある日の下校中、男子にからかわれとった。

からかわれんのは、私が髪を伸ばしたりスカート履いたりせんからやって思っとった。
けど、こいつらの所為でそんなんに手を掛けるのが面倒で、「ほなそうしよう」とはならんかった。


仮に可愛いスカート履いて来たとして、可愛い髪型にして来たとして、今度は女子に「ぶりっ子や!」って因縁つけられる。

避けたいのは絶対的に女子からの方やから、たまにやって来る男子の方は流していた。


『……うっさいわ』
『ギャハハハ!!こえー!!目で殺られる!!』


只のビビリと言えばそうかもしれんが、それ以上に「超」が付く程のものぐさでズボラと言った方がしっくりくる。

高校に入ってからは友達に恵まれて大分マシになったが、昔はとにかく面倒事から避けて生活しとった。
体育が得意やったけど、目立ち過ぎん様に適度に手を抜いた。

今とは違うて、他人にも興味が持てへんかった。



『何しとん?』

『……信ちゃん』
『げっ!4年の……』

後ろから現れた信ちゃんは、表情を変えずに淡々と言った。



『お前ら。名前が何で言い返さへんか、解るか?』

『『……』』


やかましいやんちゃ坊主共でも黙る、信ちゃんが醸し出す気配が空気をピリッと締めた。


『言い返しても、誰も得せえへんからや』


そん時の事は、今でも鮮明に憶えとる。


『新しい火種は、新しい争いになるだけで……名前は面倒な争いはしたないんや』

『……は?ひ、ひだ……?』


『名前は普段はアホやけど、実は理にかなった事ちゃんと考えてんねん』



信ちゃんが私の中にストンと落ちてきた瞬間。


只の幼馴染みやと思とった信ちゃんが、私の一番の理解者になった瞬間やった。

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