第14章 レインドロップス【澤村・及川】
会場に到着した時、烏野対青城の試合は2セット目に入って間も無くの所だった。
青城リードで両チーム共に10点台に乗り、及川の強烈なサーブが烏野を襲う。
「……澤村っ……」
澤村の横に、ダァンと音をたてて落ちるボール。
烏野の皆の背中側の席で観戦する私は、及川のサーブを落とした背番号1番の大きな背中が一瞬震えたのを見た。
「ひゃー、すんごいねー!サーブ」
ミオが隣で声を上げる。
「すごいよね……及川」
及川も、他の青城の選手も、この春高予選に掛けてきた。
すごくない筈が無い。
でも……
「でも、澤村は……烏野は、絶対に大丈夫!」
2セット目、青城のセットポイント。
さっきは決められた及川のサーブが、澤村のフライングレシーブで上がる。
「わ、すごっ……!!」
最終的にこのセットは青城に取られてしまったが、ファイナルセットでは及川のサーブや相手の攻撃に、これまで以上に良い対応しているように見えた。
「おーし!このまま行くぞ!!」
「「オェーイ!!」」
得点毎に円陣を組み、チームの士気をキープするキャプテンの澤村。
その中で見せる、少年っぽい笑顔。
「やっぱり好きだよ……澤村……」
気持ちが溢れる。
威力が上がり、照準も合ってきた渾身の及川のサーブを澤村が拾った時……
熱いものが、私の目から溢れ出た。
「ッシャアアアア!!」
菅原や東峰くんと一緒に叫ぶ彼。
「……っ、素直になれなくて……ごめんねっ」
試合終盤では、青城の人も烏野の皆も、体制を崩して必死でボールの命を繋いでいた。
「……こんな弱い私で、ごめんね……ふたりともっ」
烏野の勝利を告げる笛は、今の私にとって「終わりと始まり」の音だった。
ネットを挟んで、しっかりと握手を交わす澤村と及川。
それを見て実感する。
これから私と彼らとの関係が、終わり、そして始まる事を。