第14章 レインドロップス【澤村・及川】
『名前、突然メールごめん。澤村だ。お前の友達にアドレス聞いた。』
複雑な気持ちでドキドキして、汗ばんでしまった指でメール画面をスクロールする。
『今日の試合勝って、明日の午前中も勝ったらさ。
明日の放課後、仙台市体育館に試合観に来いよ。多分、間に合うと思う。』
試合……
きっと青城もまた……来るんだよね……?
『IH予選の時みたいには、ならねぇからさ。待ってるよ。』
丁度メールを読み終えた時、ラインの着信を報せる画面が表示された。
「及川、からだ……」
『名前ちゃん久しぶり!元気してたかな?』
軽快な挨拶の下には、澤村と同様、明日の午後の試合を観に来て欲しいという内容が綴られていた。
「名前、どうしたのー?スマホ見て固まって」
いつもの様に話し掛けてくるミオに、私は聞いた。
「……澤村に、私のアドレス教えた?」
「うん。非常ベル騒ぎの時にトイレ行ったら廊下で呼び止められてさ。
すっげー真剣に頼まれたし、ストーカーするタイプにも見えないしさ……あれ、ダメだった?」
泣きそうになりながら私は、ミオをハグした。
「……バカぁっ!ありがとぉ……!」
「???」
澤村に対しても、及川に対しても、気まずいという想いは当然あった。
きっと私は心のどこかで、糸口を求めていたのだ。
澤村が送ってくれた文章を見て……
この間の非常ベル騒ぎを思い出して……
また、実感する。
私にはやっぱり、澤村しか居ないんだって。
及川ときっぱり別れて、清算して、それで全部無かった事になるとは思わないけど。
伝えたいと思った。
明かせなかった、私の気持ちを。
最低な私を、それでも好きだと言ってくれた澤村に……
私の、本当の気持ちを。
及川にも謝らなければいけない。
彼の気持ちに、応えられない事を。
26日の金曜日、お昼くらいに澤村と及川からそれぞれ、『勝ち残っている』と連絡が来た。
授業が終わった後、諸々の事情を話したミオと共にバスに乗って仙台市体育館へと向かう。
天気は雨。
会場に着くまで、まさか烏野と青城の試合だとは知る由もなかった。