第14章 レインドロップス【澤村・及川】
*及川side*
名前ちゃんから届いた、『今日は行けない』のメッセージ。
今日で2回目。
つまり2週連続で会えていない。
先週の1回目は、女の子の日でもきちゃったのかなって思ってた。
でも違ったみたいだ。
『……名前ちゃんっ、好きだよ……』
最後に抱いた10月1日、俺は堪らず伝えてしまった。
中学の頃から、抑え込んでいた気持ちを。
軽率に女の子とチャラチャラ遊んでいたから、本当に好きな人が出来た時に踏み出せない。
一歩先行く大人な名前ちゃんは、そんな俺に興味なんか無いと思っていた。
だから気持ちを仕舞い込んだ。
中学生の俺は、フラれるのが怖かった。
IH予選の試合中に観客席で彼女を見つけた時は、運命だって思ってしまった。
気持ちを仕舞った事を、俺は後悔していたから。
でも名前ちゃんは、唯一人をブレずにずっと見ていた。
烏野の、主将。
強引に連絡先を交換して、強引にセフレになった。
彼女の、澤村クンへの想いを知りながら。
2週間前ベッドの上で告白した俺に、名前ちゃんからの返事は無かった。
キスも拒まれた。
何事も無かったかの様に、帰って行った。
ベッドの上でだけのノリでも良かった。
その一度きりでも良かった。
名前ちゃんからの「好き」が、俺は聴きたかった。
春高予選を控えた来週の月曜日は、イレギュラーで練習がある。
名前ちゃんには、また会えない。
そして、お互い勝ち進めば、烏野とは準決で当たる。
春高出場だけじゃない。
名前ちゃんの事も、賭ける。
ウチが勝ったら、俺は改めて名前ちゃんに告白する。
名前ちゃんの望む男になって、絶対に振り向かせてみせる。
もう何があっても、愛し続けられるよ。
名前ちゃんの心も身体も、俺に夢中にさせてあげる。
だから、準決まで登って来いよ……烏野。