第14章 レインドロップス【澤村・及川】
*名前side*
また月曜日がやって来た。
毎週自動的に入っている、及川との約束。
今日の天気は曇り。
どんよりしていて、私の心みたい。
鞄を肩に掛けて教室を出る。
お財布的にそろそろホテルは厳しいんだけど、彼はお金持ってるのかな?なんてボンヤリ考えていた。
「よっ!苗字」
一番会いたいようで、会いたくない人だった。
「さ、澤村……」
先週急に話し掛けられた時も驚いたけど、今週までとは……。
しかも妙に明るくて快活な彼を目の当たりにして、持っていき様の無い罪悪感に苛まれる。
「今さ、少し時間ある?」
「え……?」
一体何の用だろう。
今からコトをしに行こうというタイミングだけに、何だかソワソワしてしまう。
「……いいけど」
それでも大好きな人からの初めての誘いなんて、嬉しくない筈が無い。
「良かった!悪いな」
ほら……そんな嬉しそうな顔する。
これ以上、私を揺さぶらないでよ。
高鳴る心臓の音が、澤村に聴こえてしまいそうだ。
進路指導室。
出入り口の「使用中」の札を掛ければ、基本的には人は入って来ないだろう。
「澤村、部活は?」
「今日は遅れて行くって言ってある。スガが居るし、平気だよ」
「澤村が部活優先しないなんて珍しいね」
「大切な用事だからな」
「大切な用事って?」
澤村の顔を見た瞬間、私は彼の逞しい腕の中に収められていた。