第14章 レインドロップス【澤村・及川】
*名前side*
今日は月曜日。
あの人の、練習がオフの日。
毎週自動的に入っている、会う約束。
「よっ、苗字。久しぶり」
思ってもみなかった、大好きな人からの突然の言葉。
嬉しいのに……ホントは飛び上がるくらい嬉しくてドキドキするのに……。
ニヤけてしまいそうになるのを必死で我慢して、平静を装う。
「……リセットして、綺麗になる気がするから」
態度は素直になれなかったけど、これはホントの事だよ?
私の心にこびり付いた、罪を洗い流してくれる様な気がするから。
弱い自分が一旦、清らかになる気がするから。
だって月曜日は、あの人に会う日。
身体を重ねるのは、好きな人とだけが良い。
でも、それが叶わない寂しさを他の人で埋めている。
こんな女、最低だよね……澤村。
もし知られたら、真面目なあなたはきっと私を軽蔑する。
高校生だもん、当然だよね。
「澤村。声掛けてくれて、ありがと」
でも、澤村に助けて欲しいとも思ってる。
この虚しさを絶ち切れるのは、澤村だけだから。
あなたが私のものになれば、こんな意味の無い事、しなくて良いんだから。
なんて、都合が良すぎるかな……。
「名前ちゃーん!コッチコッチ」
いつもの駅前のカフェで待ち合わせていた及川徹が、ニコニコの笑顔でこっちに手を振る。
「……」
「なにさ、どーしたの?いつにも増して元気無いじゃん?」
同じテーブルの椅子に座る私を、上目遣いで下から見上げてくる。
「別に。何でもない」
「名前ちゃんてさ、ホントつれないよね。こんなにイケメンな及川さんと一緒なのにさ」
「……ねぇ、早くどっか入ろ。噂になっちゃうよ」
「スルーしないでよ!……ま、それもそうだね。もぉー名前ちゃんったら、せっかちサンなんだから♡」