第13章 ジーザス!【黒尾鉄朗】
私が出ていった後で彼との間であった事を語るクロは何でも無かった様に言っているが、きっとすごく勇気のいる事だったと思う。
私の為に……?
豹変した彼とすんなり別れられたのは、クロのお陰だったのかな?
それに、私がマメに投球数記録してたり図書館で色々調べたりしてた事……知ってたんだ。
クロは私の事、ちゃんと見ててくれてたんだ。
クロと触れている鼻が熱くなる。
それなのに、それだけでも意識してしまうのに。
クロは私を抱き締めた。
「もう我慢すんな。俺が名前を……大切にするから」
久しぶりに男の人にされた優しいハグ。
大きなクロの身体にすっぽり埋まると温かくて、安心する。
これでもかという位に密着していて、ぎゅっと強めに抱き締められた圧で、私の腕も自然にクロの背中に回る。
彼の少し皺が寄ったブレザーはつるっとしていて触り心地が良くて、もう少しだけ腕を締めてみれば、しっかりと鍛えられた背中の筋肉の固さを感じた。
「……いきなり俺の事、好きになれなんて言わねぇから」
「……ん」
「……急にキスして、悪かったな」
「……ん」
恋愛にはならなかったクロの身体も心も、今はこんなにも近くに感じる。
最初に受けたキスの攻撃では驚くばかりだったが、クロの気持ちは確かに私に届いている。
「……私の事、ずっと見ててくれてありがとう」
「これからは名前も俺の事、見てろよ」
クロは言うと、私を抱き締めたままチュッと啄む様なキスを2回した。
「でもっ、順番……間違ってる」
「俺はセフレとかから始まるのも全然アリだヨ?」
また誤解される様な言い方をして翻弄してくる。
「……そういう事ばっかり言ってるから、女タラシだと思われるんだよ」
「あ、冗談だってバレてた?」
「クロは、本当の本当は、優しくて誠実な紳士なんだよね」
クロは抱き締めていた手を緩めると、私の肩に手を置いて身を屈めた。
「……キスしよ?紳士だから確認してからする」
「……紳士からのキスは、拒まないよ」
すぐにクロの唇が重なる。
今度のは舌を絡めた濃厚な大人のキス。
角度を変えて、私の舌を絡め取ってくる。
クロと私の唾液が混ざり合って、このまま身体まで溶け合ってしまいそうだ。