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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第13章 ジーザス!【黒尾鉄朗】




「名前が、彼氏クンと別れたって聴いたんだよネ」

「耳がお早いこと」

「まぁね~。つか、なんで昼間教えてくれなかったの?」


昨日の今日で気持ちの整理もついていないから、まだ私は誰にも話していない。
きっと彼の側から話が広まっているのだろう。
彼は野球部のスター選手で、有名人だから。


クロには彼の事で相談に乗ってもらう事があったから、気持ちが落ち着いたら言うつもりだった。



「それに今日の名前さ、眼鏡ですっげーエロいんだもん」



それでも、昨日流した涙で目が腫れて、コンタクトが入らなかったのは隠しようが無かったが。



「で、イタズラしたくなっちゃいまして」

「たかが眼鏡で……なられても困るんだけど」


クロは壁ドンの体制を変えずに、更に唇を近付けてくる。

キスまで、あと5センチ。
「またキスされる」と瞬時に思って、私はぎゅっときつく目を閉じた。



「あれ?キスされるとか思った?」


私の目の高さに合わせて身を屈めたクロが、ニヤリと笑って言った。


唇を近付けたのはフェイクで、実際には掛けていた眼鏡を外されただけ。
近視の目は背景をぼやけさせたが、至近距離にいるクロの姿はくっきりと映した。


キスだと思って目を閉じてしまったのが恥ずかしくて、頬が熱くなる。

「……っ」


クロは「自分だけを見ろ」とでも言いたげに、自らをフォーカスオンしてくる。



「……かーわいー。その顔、たまんねぇ」



この空き教室に入るなりキスしてきた事、思わせ振りな発言を繰り返している事。

本当はクロは、こんな軟派な奴じゃない、という事は分かっているのだ。
クロがおふざけでしている訳じゃない事くらい。


だから、クロはズルい。


「さっきから……からかわないでよ」
「はぁ?」
「色んな子にこーゆー事してるんでしょ?」

それでも高鳴る心臓を鎮めたくて、思ってもない言葉で攻撃する。


だってこのまま心臓を鳴らせておくと、勘違い、しちゃうから……。


「クロが女タラシなの、知ってるんだから」
「言うねぇ。ま、そう見えても仕方ねぇか」

クロは切れ長の目を一度逸らしてから、再び私に視線を合わせ真剣な表情で言った。

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