第13章 ジーザス!【黒尾鉄朗】
「……んんっ!」
「はっ……」
放課後の、とある空き教室。
クラスメイトのクロと、私の息遣いだけが響く。
息継ぎで一旦は唇を離してくれたかと思えば、再び唇を塞がれる事を先程から5回は繰り返している。
クロは友達で、私の頭は混乱する一方。
彼の貪ってくる様な余裕の無いキスは、それを加速させる。
「部活前にちょっといいか?」なんて言われてノコノコ着いて行った結果、不意打ちを受けたのだ。
「ちょっとぉ……!ん、ぅ……」
「ん……キス顔、エロ」
どうしてクロが私にキスしているか、理由が分からなかった。
しかも所謂、壁ドンの体制。
バレー部主将の大きな身体に阻まれて、非力な私が逃げる事は出来ない。
彼は私を壁に押し付けて覆い被さる上半身で逃げ場を奪い、まるで唇で縫い付ける様に執拗に口付けてくる。
「……やめてっ!」
私は思いっきりクロの胸を押して、身体を離した。
クロは唇を離してはくれたが、身体のバランスは崩さなかった。
そればかりか、隙あらばまたいつでも、と言わんばかりに私の顔を至近距離で見つめながら唇を近付ける。
「はっ……なんで……?」
「なんでだと思う?」
クロの事は嫌いじゃない。
クラスでは仲が良い友達のひとりだし、席が近いから言葉だって毎日交わす。
でもクロと恋愛にはならなかった。
私にはつい昨日まで、彼氏が居たから。
───神様。
恋人と別れたばかりなのに、もう他の人とキスしてしまいました。
私は、悪い子でしょうか……?