第12章 男の子、女の子【菅原孝支】
澤村は、雑誌の「オトナ見え」ページに掲載されている綺麗なモデルを指差して言った。
「前に後輩が持って来たアイドルのポスターの中でさ、どの子がタイプか皆で選んで遊んでたんだよ」
「「……」」
「ハイ、引かなーい。女子だって同じ様な事やってんだろ?」
「はいはい。で?」
「アイツはいかにもお姉さん系の綺麗な子、選んでたぞ?」
初めて聞いた、菅原の好み。
女子なら「えーっ!そうなんだぁ♡」って色めき立つ所を、「ププッ」と嘲笑してしまう私。
そういう所が駄目なんだ、とでも言いたげなミオと澤村が厳しい視線を刺して来たから、思わず目を逸らした。
「名前!オトナメイク、明日やってみよーよ!」
「ええっ!こんなの朝何時に起きれば良いんだか……!」
「大地と孝支だって朝練で早起きしてんだから頑張るの!明日の朝、名前ん家行く!!」
「おー、頑張れよー」
「ミオと澤村、楽しんでるだけだろ……!?」
「放課後、メイク道具掘り出しツアーね!」
「ちょ、何勝手に進めてんの……!」
「苗字さぁ。スガに彼女出来てもいいのかよ?」
我らがお父さん・澤村の、必殺正論パンチが私を一撃でノックアウトする。
「……うぅ!」
「そうだよ名前!華の17歳!のんびりしてたらすぐオバサンになっちゃうんだよっ!!」
菅原はイケメンで結構モテる、これだけは知っていた。
癪だけど。
私が知る高校生になってからの菅原には、彼女が出来たとかの浮いた話を聞いた事は無いが……。
大会での躍進を遂げ、今年は何かと注目株であるバレー部。
菅原にそういう人が出来てしまうのも、時間の問題かもしれないのだ。
もう3年の9月。
ぼんやりしてればすぐ卒業だ。
菅原はまだ部活を引退していない。
時間は限られている。
何もしないで終わるより、精一杯あがいて砕ける方が、楽しいのかもしれない。
後悔しないのかもしれない。
「オトナ女子」と対極の位置に居る私。
指を咥えて見ている訳にはいかないのだ。
「よ、よろしくお願いしやっす……!!」