第12章 男の子、女の子【菅原孝支】
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昼休みになり、ミオが後ろを向き私の机で昼食を広げる。
いつもながら、そんなので足りるのか?と心配になってしまう程の小さい弁当だ。
「こうなったら名前大改造計画開始だよ!」
ミオが食事を中断し、キラキラした可愛いチャームが付いている学生鞄から雑誌を取り出す。
「ホラホラ、コレっ!」
ミオが見せてきた見開きページには、「保存版!今更聞けないモテメイクHOW TO♡イチから大解説!」の見出し。
あからさまに「けっ」という顔をしてしまった私に、ミオが力説を始める。
「名前、悔しくないの!?いっつも干物とか言われてさ!一緒に振り向かせようよ!」
「ミオの気持ちは嬉しいんだけどさ……私が今更、女の子女の子したところで笑われるのがオチだって」
「そんな事ない!いつもしてないからギャップにキュンとクるんだってば!!名前は素材が良いんだから!!」
「何でかい声で話してんだ?」
ミオの大きい声につられて、澤村が話に入ってくる。
「あれ孝支は?」
「分かんね。俺が購買から戻ってきたら居なかったけど」
「あそ。今ね、名前と一緒にこれ見てたんだ」
「……俺にはチンプンカンプンだな」
ミオが楽しそうに澤村に雑誌を見せる。
「あ、そだ。バレー部主将の澤村クン」
「何だよ苗字」
「さっき坂ノ下商店で、バレー部2年の坊主と小っさいツンツン頭にパンツ見られたんだけど」
「……悪かったな。言っておく」
なんて。
パンツを見られてしまったのは、この2人とカツサンド争奪戦をした弾みだったりする。
お昼のガッツリカツサンドの為に、運動部男子相手に死闘を繰り広げる女……。
こんな所からも自分の女子力の低さを痛感してしまい、惨めで真相を打ち明ける事も出来ない。
そんな私がちょっとメイクした所で、菅原は振り向かない。
やらなくても結果は分かっていた。
「あ。スガはこういう大人っぽい系、結構好きかもだぞ?」
「「……え?」」
澤村の一声に、ミオと私の反応が重なった。