第2章 彼女の勘違い【澤村大地】
「……さっきチラッと見えたんだけどさ」
「え?」
「それってピアス?」
俺は苗字の耳を指差し、先程の疑問を投げ掛けた。
「……うん……まぁね」
「苗字ってさ、そういうのするんだな。なんか意外」
「あっはは……そうかな」
苗字は苦笑いして俺から目を逸らす。
「今日はもう暗いし、送ってくよ。家どこ?」
「えっ、そんな。悪いよ」
「女の子1人じゃ危ないだろ。こういう時は遠慮すんな」
「でも澤村くん、部活で疲れてるんじゃ……」
「いいから!」
「はいっ!お、お願いしゃす!」
苗字の事が何処か心配だった俺は、強引に送る事を承諾させてしまった。
***
「俺んちからそんなに遠くないんだな」
「うん、そうみたい」
2人で並んで歩く夜道。
苗字に今まで恋愛感情を抱いた事は無いが、彼女の浮わついてない所、芯の強い所は以前から好感を持っていた。
「それさ、耳痛くないの?」
俺は再び、ピアスを話題に上げた。
「澤村くんも空けたいの?」
「痛そうだし無理!ていうか俺が空けてたら絶対おかしいだろ!」
「あはは……空けちゃえば痛くないけど……似合わなそうだねー」
「なんで空けたの?」
少しの沈黙の後、俺は彼女に優しく問う。
何故だか分からないが、苗字の心を引き出してみたくて仕方無かった。
苗字は理由もなく身体に穴なんて空けない、そういうイメージを持っていた。
「……言っても、引かない?」
「そんな事しないよ」