第2章 彼女の勘違い【澤村大地】
「あ、俺、教室に忘れ物。先に帰ってて」
部活終了後、課題の為に必要なテキストを教室に忘れてしまった俺は、暗くなった校舎に入っていった。
教室の蛍光灯をつけた俺はギョッとする。
「うおっ!?」
俺の机で突っ伏している女の子が蛍光灯に照らし出されたのだ。
一瞬、幽霊的なアレかと思ってしまったが。
「……苗字?」
クラスメイトの苗字 名前だった。
進学クラスという事もあり以前は成績が良かったが、3年生に上がってからはイマイチとか。
そういう話を最近聞いたばかりだった。
「……苗字、大丈夫?」
そっと肩を揺すると、耳朶にキラッと光るピアスがちらついた。
そういうタイプだったか?と考えを巡らせる。
「……んー」
「苗字、大丈夫か?体調悪い?」
「わっ!澤村くん!?大丈夫……寝てただけ……ごめん」
「いいよ。寝不足か?」
「……うん、そうみたい」
「遅くまで勉強してんの?」
「……うーん……うん……まぁ」
歯切れの悪い返事だった。
「驚いたよ。俺は忘れ物取りに来たんだけどさ」
「う、うん、ごめんね。人の机で……」
慌てて俺の机から離れる。