第12章 男の子、女の子【菅原孝支】
彼に握られた手が熱を持って、それが心臓に伝わって来る。
破裂寸前みたいな音を立てて、鼓動が打たれる。
「えー、なになにー?」
「ミオっ!何処行ってたのっ!?」
「メイク直し」
「その女子力分けてやれよ、ミオ」
「孝支、また名前いじめてんの?」
親友のミオと澤村は、私の菅原への恋心を知っている。
毎度繰り返される似たような光景を、2人はいつも呆れた様に見守っている。
ミオと澤村には、何度も助けられてきた。
去年の修学旅行では同じ班になれるように裏で手を回してくれた。
何度かバレー部の試合を一緒に観に行ってくれたり、一時期は私が菅原の弁当を作ってきたらどうかという話を進めてくれた(でも結局は流れた)。
「あ、そうそう名前」
自席に着こうとした菅原が、わざとらしい口調で私にトドメを刺しに来た。
「さっき机に突っ伏してた時、ブラ線くっきり出てたぞ」
椅子から勢い良く立ち上がり、私は叫ぶ事しか出来なかった。
「……はあぁっ!!??」
全身の力が抜けて椅子にストンと腰を下ろし、目の前の席に座ったミオを穴が開く程に凝視した。
「……さすがに足はおっぴろげて無かったよね……私?」
「知らない。見てないもん」
「席つけー。HR始めるぞー」
先生が来た後、どんなブラをしてたか不安になり、そっとシャツの襟首を引っ張って中を確認した。