第12章 男の子、女の子【菅原孝支】
「……うおぉぉぉん……」
私は月曜日の朝から机に突っ伏していた。
女の子にとって月に1度のバッドデイ。
そう、生理2日目だ。
鈍痛が襲う下腹部と腰のだるさに、いつも以上に背中が丸まって気分はブルー。
「……?」
突っ伏している私の机のすぐ横に、誰かが立った気配を感じた。
きっと親友のミオだ。
顔も上げずにそう思い込んで、私は重たいお腹を擦りながら口を開いた。
「ミオちゃ~ん……助けてぇ……今日2日目なんだよぉぉぉ……!
そうだ、手。手を握ってく、れぇ……!!」
力無く差し出した右手を、そっと握られる感覚。
暖かい。
でも、華奢だけど大きなこの手は。
女の子の手では、無い……。
バッと音がしそうな勢いで顔を上げると……
「名前、お前さ。そういう事は女子に言えよな?」
「△℃∞%*□@!!??」
そこには、眩しい位のエンジェルスマイルで私の手を握る、菅原孝支が居た。
「す!すがっ!すがわ!菅原さん!?」
「おー、菅原だぞー。落ち着けー」
「えと、あの!ミオだと思っ……!」
「名前ってホント、干物だよな」
朝練を終えて菅原と教室に入って来たであろう澤村が、テンパる私を見て苦笑を浮かべる。
「ひ、干物じゃねーし!!恋愛諦めてねーわ!!」
「ホラその喋り方。もっと女子っぽくしろー」
「スガ。もうその辺にしといてやれよ」
「ざわむらざん゛っ!!」
こんなにも爽やかでキラキラな笑顔を見せながら、いつも私の事を干物と呼び、からかってくる菅原。
私の気持ちも知らないで……。
笑顔と口から出る毒とのギャップは、かなりの破壊力。
最早、天使か悪魔かなんて分からない。