第10章 【魔人の笛】第六章――神に選ばれし男――
町の人に話を聞くために歩いていると、一人の少年を見つけた。
彼に話を聞くことはできたが、態度の悪さに表情が死んで行く。
少年ハンスの父親は警察の人間のようで、アランバード氏の事件を担当していたのも彼の父親だという。
アランバード氏の死は怪死事件だと騒がれていたが、目撃者と遺書を発見し自殺だと解決したと自慢気に教えてくれた。
「そうでなければ今頃迷宮入りさ。まさに神の目だって町中の賞賛を浴びたんだぜぇ」
自慢の父親を持って誇りを持つ少年ハンスは、鼻歌を歌いながらどこかへ行ってしまった。
彼の背中が遠くな頃。
「ルーク、目撃者と遺書について知っているかい?」
レイトンの言葉にルークは首を振る。
ユラの事が心配で事件の詳細や行方は分からないと答えてくれた。
やはりレミの調査結果を待つしかないようだ。
他にも町の住人に話を聞くと。
とある観光客は、魔人の件で迷惑をかけたと言う理由で滞在費を全て警察署長が請け負ってくれたと喜んでいた。
住人達もまた、警察署長を信頼し神の目を持つ男だと賞賛していた。
なんでも、どんな難事件も解決してしまうらしい。
なるほど、ハンスが自慢するわけだ。
は先ほどの少年を頭に思い浮かべる。
確かに父親がこんなにすごい人であれば、まだ幼い子供は自慢もしたくなる。
「それにしても未解決事件がないと言うのはすごいですね」
「ああ。一度会ってみたいものだ」
それにしても、なんともうさん臭いな。別の意味で会ってみたいよ。
心の中でため息を吐く。
魔人に、黄金宮に、神の目を持つ男。
ナゾはさらに深まるばかりだ。
「、どうしたんだい?」
「あ、いえ。少し考え事を」
「ふふ、考えがまとまったら話してくれるかな?それより今から黄金宮の発掘現場に行こうとルークと話していたんだが、君も来るだろう」
「当たり前じゃないですか。考え事してるからって置いていくのは無しですよ」
どうやら考え事をしていたは道端で立ち止まっていたらしく、それに気づいたレイトンが彼女に声をかけた。
少し離れた場所でを待つルークと目が合うと、小さく手を振った。
聞き込み調査をしながら、彼らは黄金宮が眠ると言われている発掘現場へと向かったのだった。