第3章 【魔人の笛】序章―—出会いと再会――
寝不足気味のレイトンにローザは優しく声をかける。
「がんばりすぎるとまたじいさま教授がたから嫌われますよ」
「私も彼らから見ればまだ若造だからね」
「若いからって油断は禁物です。レイトンさんに倒れられちゃ自分が困ります」
「はは、気を付けるよ」
そう言ってレイトンは机に向かい、もらった手紙に封を切る。
その間、ローザがレイトンに何かを言っていた。
グレッセンヘラーカレッジの学長であるデルモナがどうやらレイトンに話があるらしい。
しかしそれをよそにレイトンは手紙の内容に釘付けだ。
「レイトンさん、聞いてました?」
見かねたが声をかけるも、彼は真剣な顔つきで、ソファに投げられていた上着を羽織った。
「ちょっと出かけるよ、ローザ」
「え、あ、レイトンさん!!」
一体手紙にはなんて書いてあったのか。
知る由もないはレイトンを止めようとするが、それがかなったことは一度もない。
彼女が淹れた紅茶を思い出し、一気に飲み干す。
ちょうどよく冷めた紅茶はレイトンの喉を潤した。
「ありがとう、、ローザ」
「行ってらっしゃいませ、教授。さ、も行ってらっしゃい」
「は、はい!!」
研究室を出て行ったレイトンの後ろを慌てて追いかける。
何か事件が起こると他の事はほったらかしにしてしまう。
本当は今日だって溜め込んでいる学会への提出物を消費する日でもあったのに。
レイトンの愛車に乗り込み、は大きなため息を吐いた。
「で、そんなに急いでどうしたんですか。手紙に気になる事でも」
「まあね。はクラークを覚えているかい」
「クラーク……。クラーク・トライトンさんですか。レイトンさんの旧友の」
「ああ、手紙はその彼から送られてきたものだ」
差し出される手紙に目を通す。
そして眉をひそめた。
この手紙の内容は一体どういうことなのだろうか。
眉間に皺を寄せる彼女を横目に、レイトンは口を開いた。
その瞬間、一台のバイクが目の前に飛び出してきた。
慌ててブレーキを踏むレイトン。
突然のことで受け身を取ることができず前のめりになる。
そんな彼らをよそにヘルメットを外す女性。
この出会いが、彼らの運命を大きく変えることとなる。