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追憶【レイトン教授】

第3章 【魔人の笛】序章―—出会いと再会――






風が心地よく吹く晴れた日。
自転車のペダルをこいで、一人の女性は、グレッセンヘラーカレッジの門をくぐる。

「ローザさん、おはようございます」
「あら、おはよう。今日はずいぶんと早いのね」
「早くに目が覚めちゃって」

黒髪のショートカットに全身黒い服装の女性は白い歯を見せて笑う。
その様子にローザと呼ばれた年老いた女性も微笑みを返した。

「レイトンさんは、また徹夜ですか?」
「ええ、たぶん研究室で寝てると思うわ」
「じゃあ、自分起こしに行ってきます」

そう言っては研究室に続く扉を開けた。
軽い足取りで階段を上がり、雇い主である人物の部屋の扉をノックする。
返事はない。
どうやら思ったより深い眠りについているようだ。

静かに研究室の扉を開けると、ソファの上で寝息を立てている男性がいた。
エルシャール・レイトン。
それが彼の名前だ。
愛用している上着は掛布団代わりになっている。
本当はこのまま起こすのがいいのかもしれないが、このところ徹夜続きだったレイトンを思うともう少しだけ寝かしておこうとは内心で決めた。
いつ彼が起きてもいいように紅茶の準備もしておく。

ドリップケトルに水を入れ、ガスをつける。
沸騰したらそれをウェッジウッドのティーポットに高い位置から注ぐ。
3分から5分ほど蒸らしている最中、研究室の扉が開いた。
ローザだった。

「教授、教授」

ローザの声に先ほどまで寝ていたレイトンが目を覚ます。
は、もう少し寝かせていたかったがそれは叶わなかったらしい。
ローザがこうして研究室を訪れるときは部屋を掃除しにくるか、誰かからの依頼があったときくらいだ。
そして今回はどうやら後者らしい。
ローザの手には一通の手紙が握られていた。

大きなあくびをしながらレイトンはその手紙を受け取る。
もまた、さきほど入れた紅茶をティーカップに注いだ。
レイトンとローザ、そして自分の分。




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