第3章 【お強請りの仕方】
そう返事をすると、いつもは表情筋が死んでいるくせにこういう時は顔を輝かせる。
そして気分が良くなったのか『珈琲淹れてきますね』と言って台所へ向かう。その後ろ姿を眺めながら、頬杖をつく。好きな女に貢ぐのは嫌いじゃない。寧ろそうでもない女に貢いでいた俺だ。嫌な訳が無い。それは良いのだ。ただ問題なのが……。
は義理堅い奴で、買ってもらうなら何かやれる事は無いかと聞いてくる。だから俺はいつも、お前だけが欲しいと言う。その度にいつも『キザ…』と言ってくるが、もう慣れた。
ベッドの上に行くと、珈琲を両手に持った彼女が机に戻ってくる。
「こっちに来い」
『…………』
「プリン1年分」
『行きます』
膝の上に座る様に促すと、大人しく言う通りにする彼女。長い髪を梳いて掬い上げると口付けをひとつ零す。「こっちを向け」と言うと、嫌々ながらも体勢を変えてくれる。
「……俺はお前が居れば、それで良いんだ」
『?』
呟く様に言えば、首を傾げる。そんな彼女の頬に手を添え一言。
「お前の為なら何だってやれるし、いくらでも金を出す」
『……』
彼女は黙って彼の口から紡がれる言葉を聞く。
「だから……俺の傍から離れるな」
最後に力なくそう言うと唇に口付ける。それは短いもので、お互いの顔が離れると暫く見つめ合う。そして彼女がため息をひとつ零した。ドフラミンゴは自分が言ったことを彼女がどう受け止めたのかを知りたかった。しかしそれは彼女の次の一言によって、解決する。
『私はもう…ドフラミンゴさんからは離れられないと思います。だって貴方は独占欲が強いから』
「……理由になって無くないか?」
『まぁ、つまり……ドフラミンゴさんの隣に居ると落ち着くので』
そう言って柔らかく笑う彼女を見て「…フッフッフ」と、いつもの笑みに戻る。そしてもう一度彼女に口付けをする。今度は深くて濃いものを。