• テキストサイズ

とりかえばや!(ヘタリア)

第9章 エンドロール




会いたかった

声が聞きたかった


名も知らぬ、君をずっと思っていた



いざ君を見たら、身動きひとつ取れなくなった








「お兄様」


リヒの声で我に返り、一気に魔法が解かれたようだった。


「お姉さまにお茶をお出ししてもかまいませんか?」

「ああ、頼む…」

そういうと、リヒはキッチンへと消えた。


赤毛の娘…村崎と二人きりになった。

キッチンからはカチャカチャとお茶の準備をする音が聞こえる。

今日に限って、いつものように、彼女の目を見ることができない。

なぜなのか分からないが…。

そして、彼女もまた、我輩の目を見ない。

ただ静かに、みごとに咲き乱れる花壇を見つめていた。


どれくらいそうしていただろう。

我輩は窓を見つめている彼女をそっと見た。

ぼんやりとした様子で、どこか悲しげに、いつもに増してはかなげに見えた。

呼びなれぬ名を呼びかけてみようか、逡巡していると、リヒがティーセットを持ってやってきた。

彼女が、ティーカップに視線を映し、注がれる紅茶を見て目を細めた。

その刹那、その瞬間。

何が起こったのかわからない。ただ不思議で、その場の物、すべてが光り輝いて見えた。




「我輩と、結婚して欲しい」




この刹那、この瞬間。

ずっと昔から待っていたような気がした。
/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp