• テキストサイズ

とりかえばや!(ヘタリア)

第7章 虎穴のワルツ編


曲はすでに最終章にさしかかっているらしい。
地下なのにおかしな風が吹き出す。まるでピアノに向かって吸い込まれていくように。

「どこの誰かは存知ませんが、演奏を止めて、即刻楽譜をお返し願えますか?」

ステージに飛び乗り、ローデさんは演奏者に向かって言う。

薄暗い明かりの中、激しく演奏する黒いローブの人物。
こちらに一瞥することもなく演奏を続ける。

風がどんどん強くなっている。時折足をすくわれそうになるほどに。
と、そのとき、レールからはずれたカーテンが、ピアノに飛んできて、吸い込まれるようにその上空に消えた。

「なにあれ…」

ピアノ上空に黒い渦を巻いた何かが現れた。

不思議な動きをするそれを、私は目を凝らしてみていると、隣にいたローデさんが動いた。

腰に下げていたレイピアの鞘を思いっきり振り、演奏者を椅子から殴り落とした。

「すばらしい…!ほんとうだったんだ、悪魔の降臨は!!」

目だけが異様にぎょろっとした面長の男は、椅子から落とされたことでピアノ上空の黒い渦に気づき、甲高い歓声を上げた。


曲はまだ途中のはず。
しかし、黒い渦は何度かうねり、中から何かの気配がする。

男が歓声を上げている中、魔法の解けた二人(正しくは一人だけだけど)が神妙な顔をしてこちらにやってきた。

「なになに?3D映画か何か?」

「あいつは何を喜んでいるの?」

緊張感のないことを言いながらも、やばい雰囲気を感じ取ったのか、それぞれに武器を構える。

「下がっていなさい」

ローデさんは私の前に出た。

「私も、たたか「「「だめ」」です」

なぜか同時に三人に言われて守られる形になってしまった。

「菊ちゃん無理してるの丸わかりだから。」

と、フランシスさん。

「私が気づいていないと思いましたか?」

ローデさんにもにらまれて、私は何も言えなくなった。

「黙って守られとけ。お前に無理されるとみんな辛いんだ」

ギルベルトさんはそう言って、私に盾を渡した。
/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp