第7章 虎穴のワルツ編
「一刻も早くここを出るぞ」
最初にそう言ったのは、フランシスさんだった。
顔が青く見えるのは、月明かりのせいではないだろう。
「悠長に茶なんか飲んでんじゃねえよ!お坊ちゃん!」
壁に掛けてあった剣と盾を握りながらギルベルトさんは言う。
「菊ちゃんは俺が守るから、安心しとき」
「いえ…、わ・私もサムライなんで戦います・よ?」
肩を組んで勇ましく言ってくれた親分も顔が強張っていたので、私もそう言った。
そんな中、暗い声でローデさんはつげた。
「…逃げられるならば、とっくにそうしてますよ。
でも、この敷地内から出られないんです」
「「「はああああああ????」」」
「『奴』があの曲を地下室で演奏している間、私たちはここから出ることはできないんです」
ローデさんのその言葉通り、どこからかピアノの音が聞こえてきた。