第7章 虎穴のワルツ編
私たちが通されたのは巨大なテーブルのある部屋。
正面に暖炉があって、その手前にローデリヒさんが座った。
毎日狭い和室で生活する私は、妙な緊張感と威圧感を感じる。
「書庫から一つ、楽譜を盗まれていたんです」
ローデさんは顔の前で手を組んで、大きくため息をついた。
どうやら探すのにだいぶ手間取ったらしい。
でも、そうだよね。ないものを必死で探したんだもの、疲れるよな。
「楽譜?なんだって粋狂な奴がいるね。
こーんなにお宝がいっぱいあるのに」
そういってフランシスさんは手を広げて見せた。
たしかに。
モノの価値はわからないけれど、どこもかしこも高級な骨董品ばかりに見える。
…このカップとかも絶対アレだよ、割ったら尻の毛まで抜かれるような額を請求されるんだよ!
そんなケチなことを考えていると、隣で同じように親分がゆっっくりとカップを置いた。
それを知ってか知らずか、ギルベルトさんは荒々しくテーブルを叩きながら「ちがいねえ!」とか笑っている。
親分は一度こちらににっこりほほ笑んだ後、無言でギルベルトさんの頭を叩いた。
「いってー!なんでいきなり叩くんだよ、この野郎!」
「なんかむしょーーに腹立ったから」
思う存分やってください、そっちは壊れにくいんで。