第7章 虎穴のワルツ編
「親分きたでー!もう、安心したってや」
アントーニョさん、キリッとした顔で一番に走って来た。
へなへなの二人をしり目に、親分は華麗な登場だった。…さすが親分やね(自然と関西弁がうつる)。
「で、こんな夜中にずいぶん物騒なところに来たね、菊ちゃん。いくら侍だからって、丸腰でこんなところに来ちゃあ危ないでしょ」
サムライだと…!?本田さんサムライだったんか。
フランシスさんの言葉の妙なところにひっかっかってしまった。
「すみません。でも、ローデリヒさんが心配で…どこかに避難してるんですよね…」
「何かようですか、騒がしい」
「「「「うわあああああああああああ!!!」」」」
四人同時に叫んだ。
背後にいきなりローデリヒさんが現われた。
「ローデさん…屋敷にいたんですか?」
一番最初に冷静になったのは私だった。他三人はまだちょっとビビってる。
「ずっといましたよ。
ちょっと探し物をしてまして…こんな夜更けになんのようです?」
「あ、あの強盗の被害に遭われたのでは?」
「…強盗?
まあ空き巣にはやられたようですけど、大した被害ではありませんでした」
あっけらかんと答えるローデリヒさん。案外この人肝が据わっているのかもしれない。
「空き巣、ですか…
何やら噂になっていたので、どうしているのかと思って…」
ローデリヒさんに目の前に立たれると、うまく話せなくなる。…緊張して。
「まあ、そこに立っていられてもなんですから、中へどうぞ
後ろのお三方も。…それともそこで番をしてくださるのですか?」
三人はまよわず屋敷の中へ入って来た。
だけど私は聞き逃さなかった。
ローデリヒさんの、疲れ切ったようなため息を。