第6章 長期滞在になってまいりました。
少し笑顔をこぼした本田を見て、俺もうれしくなった。
(買ってきてよかったな)
と、俺は本来の目的を忘れそうになる。
本来の目的、本田の秘密を聞き出すことだ。
単に、悩んでるくせに話さないなんて水くさいとか、話してくれてもいいじゃねえかバカァ!とか思ってるわけじゃ決してないんだからな!
これはある意味秘密を探るための作戦、というかだな…もう自分が何言ってんだかわからなくなってきた。
俺がごちゃごちゃ考えている間に本田の家にやってきた。
それにしても秋の日本庭園は本当に美しい。見とれてぼーっとしていると、本田が笑いながら、
「今日は縁側でお茶でも飲みましょうか」
そう言って縁側のほうにお茶と月餅を置き、座布団を敷いてくれた。
庭園を見、横目で本田を見る。
一つ一つのしぐさがどこか艶めかしく見えるのは、俺の目が曇っているからなのだろうか。
同じ部屋で寝たら絶対襲う、とかおかしなことを考えながら俺は緑茶を一口飲む。
「結構なお手前で」
「え?」
「お茶をもらった時、日本ではこう言うのが礼儀だってアルが言ってた」
と、言うと本田はころころと笑いだした。
「いえ、間違っていません。間違っていませんよ、どうかそのスタイルを貫いてください」
「もう言わねえよバカァ!」
しばらく本田は笑っていた。あとで覚えておけよ、アルフレッド(だがおそらく本人には悪気がない)。
「本田もそうやって笑うんだな」
と、俺が言うと本田はピタリと笑うのを止めた。
「おかしいでしょうか」
「いや。おかしくはないが、珍しいと思ってな。いつも控えめだから」
「そ、そうですか」
少し気まずそうな表情をする本田。
何がそんなに気になるのか、少し挙動不審である。
「あの…私ってどこかおかしいですか?」
「は?言葉の意味がわからない」
「…他にも、いつもと違うところってありますか?」
そんなこと急に言われてもそこまで気にして見てねえし、と言いたかったが、本田があまりにも真剣に聞いてくるので言えなかった。