第4章 徐々に人脈が増えている件。
「あ、菊!久しぶりー」
庭の水やりをしていると、草木を掻きわけてフェリシアーノさんが顔を出した。
「うわああああああ!」
私は驚いてフェリシアーノさんに水をかけてしまった。
「なんであんなところから出てきたんですか!もう、うちの敷地内にいつ入ってきたんですか!」
「ヴェ~…ごめん、菊。道に迷っちゃったんだ…。
それにしても、口調がローデさんにそっくり」
フェリシアーノさんはクスと笑って私の髪を触った。
「!?」
思わず驚いて飛びのいてしまった。そのため、「その反応ショックー!」とフェリシアーノさんは悲しげな声を出した。
フェリさん、たまに人違う!
私は口をぱくぱくさせて驚きを表したが、フェリシアーノさんは「ヴェ~」というだけで分からないみたいだった。
自覚がないようだ。
カン
猪脅しが心地よく響く。その少し遠くで蝉の声。
「菊の家ってすごく自然がいいよね。耳も目も楽しめる感じ」
「…私もそう思う…」
あ、ここは謙遜するものか。
そう思って、あわてて否定しようとしたが、フェリシアーノさんは「何あわててるの?」と不思議そうに聞き返されるだけだった。
少し暗い家の中に比べて、外は明るすぎるくらい日が照っている。
「ふぅ・・・生き返るー…」
フェリシアーノさんが扇風機を占領して濡れた体を乾かしている。
その姿を見て、私がくすくす笑うと、フェリシアーノさんが目を細めながら、
「菊、時々女の子みたいだね」
と言った。
私は笑うのをやめて、フェリシアーノさんを見た。
少し陰になっているせいなのか、その表情は読めない。
蝉の鳴き声だけが辺りに響き、なんとも言えない沈黙が流れた。
「…すみません」
私は、その沈黙に耐えられなくなって謝った。
「なんで謝るの?」
すべてを見透かされそうで、私はしばらくフェリシアーノさんの顔が見られなかった。