第3章 とりかえばやがばれないように行動しましょう。
「リヒ。我輩である」
「はい、今開けます」
ゆっくりと扉が開き、思ったより小柄な少年が姿を現した。
「!?」
どういう顔をしていればいいのか分からず少し猫背で立っていると、いるはずのない第三の存在の私に、バッシュさんは息をのんだ。
そして銃に手をかけた。
私はそれを確認してぎゅっと目をつむると、銃に掛けたその手を、リヒさんが掴んだ。
「申し訳ありません。彼は…私の来客なんです」
リヒさんも、なんと答えたらいいのかわからなかったらしく、言いづらそうにそう言った。
「リヒの?…ならよいが」
一瞬何を言っているのか分からない、といった顔をしたがリヒがそう言うのなら、という感じで納得したようだ。
…まるで娘の彼氏にでもなったような気持ちだな…
心の中でほっとしながらそんなことを考えた。
「本田、ずぶぬれではないか。どうした?」
「あ、あのこれには深いわけが…!」
急に話しかけられて、舌を噛んでしまった。
うぐっと言って下を向くと、バッシュさんは不可解なものを見る目をした。
「びしょ濡れになるのに深いわけがあるのか。全く分からん」
そしてその答えをリヒさんに求めたが、リヒさんも困ったように眉を下げるだけ。
いよいよ困ったバッシュさんは、
「まあ、なんでもよいが…。とりあえずその格好でウロウロされたらたまらん。シャワーでも浴びて来い」
と言ってバスルームを指さした。