第3章 とりかえばやがばれないように行動しましょう。
ガシャーン!
私は水の入ったバケツを思いっきり踏んでしまった。
思いっきり水をかぶったうえ、脛をぶつけた。
「いたたた…」
「大丈夫、菊?」
「はい…なんとか…」
「兄ちゃんに、タオルかりてくるから、待っててね」
「え!大丈夫です!!」
私の答えを聞かずに、フェリシアーノさんはフランシスさんの家に入って行ってしまった。
…まずい。
私は痛い足を引きずりながら、その場を後にした。
「そういえば、私ルートさんちどこか知らない…」
思うままに走ってきた私は、すっかり道に迷ってしまった。
「菊ー!」「菊ちゃーん」
すぐ近くでフェリシアーノさんとフランシスさんの声がする。
これではすぐに追いつかれてしまう。
「ど、どうしよう…」
なるべく人目に付かないような場所を選びながら走っていると、小さな明かりが見えた。
そんなに大きくはないが可愛らしい1軒の家。
私はその戸口まで行った。
「あの…すみません、開けてください…」
戸を叩いてみたが、中からは何の反応もなかった。
「すみません」
私はもう半分涙声になりながら戸をたたいたが、中からはやはり反応はしない。
その時、
「あ、菊!」
少し離れたところからフランシスさんの声が聞こえた。
振り返る勇気もなく、私は震える手で何度も何度も戸をたたいた。
「お願いします!開けてください!」
すると少しだけ戸が開き、そこから優しげな顔をした少女が顔を出した。
「あ…」
情けない顔をして、びしょ濡れの私を見て、彼女は少し驚いたような声を上げた。
そしてくいっと袖を掴むと、中に入れてくれた。
ドアを閉め、厳重に鍵を閉めた。