第3章 とりかえばやがばれないように行動しましょう。
「菊ちゃん、いらっしゃい」
フランシスさんがドアを開けてくれた瞬間、私は氷付いた。
「こ、こんにちは…本田さん」
シャンパンを配っているトーリスさんが挨拶してくれた。
「あ、あの…服、は?」
頭が真っ白になりながらも、私はトーリスさんに聞いた。
「え?…ああ、えっと僕のはアルフレッドさんに取られました」
「アルフレッド様に!?」
「様って…」
おっと頭の中で呼んでいた呼称が思わず出てしまった。
「わ、わ、私困ります!こんな…」
「慣れると案外大丈夫なものですよ。みんな裸ですから」
そう、この会場にいる人、全員裸なのだ。
トーリスさんは控えめに笑って去って行った。
私が男ならそう思えたかもしれない。だけどとてもじゃないがそうは思えない。しかも、本田さんじゃないってバレる。
私が急いで部屋を出ようと振り返ると、そこにはフランシスさんが。
「おっと。どうしたの、菊」
「あ、と・トイレに」
フランシスさんの目を見ず、そそくさと会場を後にしようとしたが、フランシスさんは入り口に手をついて通れなくした。
「…本田?そっちはトイレじゃないよ?…裸でもいけるよね?」
嫌な笑いを浮かべながらフランシスさんが、私のほうに手を伸ばしてきた。
私は反射的にその手をかわし、トイレのほうへ走った。