第5章 カクテルの名前
「帽子も眼鏡もマスクも‥もう嫌だな」
そう、独り言を呟いてしまう。カウンターと繋がる扉からに着いている小窓からマスターが顔を覗かせる
「全部外したの久しぶりにみた‥飲み物はノンアルねーちょっと出したいのあるから待ってて!」
「はーい!」
出したい物‥なんか嫌な予感がする。そう思い扉の方を振り向くと、もう完成したのかコースターと共にロックグラスが置かれる
「“Virgin breeze”ね!」
「嫌味ですよね?」
「どうして?初めてのそよ風だよ?」
ニコリと笑い去っていく後ろ姿に口を尖らせて見てしまう。
この出てくるまでの速さ‥私が入ってすぐに準備し始めてる。この間の会話を全て聴かれていたと思い恥ずかしくて頭を抱え込みたかった。扉の向こうでは絶対笑ってる‥
しばらく時間が過ぎた頃、出入り口である扉がガチャリと開く“来てくれた!”と思い立ち上がり笑顔を見せる
「ぶっはは!今、凄い嬉しそうな顔してた!!」
「マスター!!もう!!私を揶揄うのやめてよ!!」
また、騙されたと思わず店と言うことを考えず大きな声で騒いで、私を騙した本人を睨み付ける、すると、後ろに人影が見えて恥ずかしさに思わず顔を赤らめてしまう
「悪いな!坂木‥来てもらっちゃって」
「いや、マスターの頼みなら別に‥ちょうど解散の流れだったし」
“マスターの頼みなら”と言う言葉に少しショックを受けたが、それでも来てくれた事に安心をする
「坂木にもお酒だすからとりあえず中はいってな!」
「こんな部屋有ったんだ、知らなかった」
そう言って坂木さんは部屋の中を見渡す。その瞳は、少しキラキラして見えた。
坂木さんは机をチラと確認して私のグラスが手前なのを見て私の横を通り奥のソファーに向かって足を進めた。横を通り過ぎた時に少しお酒とタバコの香りがした。