第14章 14話
口下手な彼は頑張って、何かを言おうとしてくれている。俺は、お前のことを、と途切れ途切れに彼は続け、困ったように眉をひそめた。私は彼が可哀想にすら思えて、自分の唇に人差し指をあて首を振った。
「いいんです。あなたが口下手な人だってわかってるから、ゆっくり教えてください」
義勇さんは目じりを下げて、こそばゆくなるような視線をこちらに向ける。腕を伸ばして、私の頭を輪郭を確かめるように撫でた。髪飾りに触れて、桜の花びらを手に取った。
金属の擦れる音が鈴のように鳴って、義勇さんは「いい音だな」と、優しい声で言った。少し肌寒さの残る風が吹いて、命の芽生えを思わせる春の気配を連れてきた。