• テキストサイズ

わらべ歌【冨岡義勇】

第14章 14話


口下手な彼は頑張って、何かを言おうとしてくれている。俺は、お前のことを、と途切れ途切れに彼は続け、困ったように眉をひそめた。私は彼が可哀想にすら思えて、自分の唇に人差し指をあて首を振った。

「いいんです。あなたが口下手な人だってわかってるから、ゆっくり教えてください」

義勇さんは目じりを下げて、こそばゆくなるような視線をこちらに向ける。腕を伸ばして、私の頭を輪郭を確かめるように撫でた。髪飾りに触れて、桜の花びらを手に取った。

金属の擦れる音が鈴のように鳴って、義勇さんは「いい音だな」と、優しい声で言った。少し肌寒さの残る風が吹いて、命の芽生えを思わせる春の気配を連れてきた。
/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp