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わらべ歌【冨岡義勇】

第13章 12話


昼食を食べ終えたあと、義勇さんは戸惑いつつも、おずおずと話してくれた。

自分の亡くなった姉が私によく似ているということと、兄弟のように仲の良かった錆兎という少年がいたこと。

彼の身の上の話を聞いたとき、彼の抱える悲しみがあまりに重く大きすぎるということを知った。彼の極力人と関わらないようにする態度の理由と、温度を感じさせない瞳の理由も。

かける言葉が見つからなくなり、俯いた。彼は気遣わしげに私の名前を呼び、頬に手を添えた。義勇さんの固い掌は、こんなにもあったかい。こんなにも、優しい。

義勇さんの体に飛びついて胸元に縋り付くと、大きな手は私の後頭部を撫で慰めた。「泣くな」と義勇さんは私の耳元で囁くように言った。義勇さんの体が私ごと傾いて、二人で畳の上に横になる。

「泣くんじゃない」と彼がまた言う。私は覆い被さるような体勢になって、彼の瞳を覗き込んだ。外から差し込む日光を反射して、雫のようにきらきらと輝いていた。

「だって、だってあなたの……」

私を下から見つめる義勇さんの強い瞳の、あまりの美しさについ息を呑んだ。二人分の静かな呼吸音が混じる。義勇さんの唇の動きに目を奪われ、私は初め何と言われたか分からなかった。

「いつから俺のことが好きなんだ?」
「な、なんですかこんなときに……」

動揺から声が震える。彼の事を好きなのは隠してはいなかったが、急にどうしたのだろう。

「宇髄が……離したくなかったら早く聞けと……」
「宇髄さんが? いつからって、恥ずかしいんですけど……言わなきゃだめでしょうか?」

義勇さんの無遠慮な態度にたじろいでいると、彼は、静かに私の体に腕を回し私を抱き寄せた。彼の体温を感じ、心臓が跳ねる。「ぎ、ぎゆうさん……」名前を呼ぶと、義勇さんは腕の力を強めた。

おもむろに、「眠い」とおっしゃる。食べたら眠くなった、寝よう、と。義勇さんは両腕で私を囲ったまま、目を閉じそのまま動かなくなった。何度か名前を呼んだが彼は応えず、黙って私の背中を撫でた。こうなったらもう何をしても聞かないだろう。私は諦めて、分厚い胸板に頬を寄せた。

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