第12章 11話
眠ってしまわれたのかもしれない。私は頬に添えられた義勇さんの手を解いた。慎重に寝巻きと布団を整え、氷嚢も必要だろうかと、熱を確認するために義勇さんの額に手のひらを当てる。
手のひらを離そうとした瞬間、義勇さんは薄く目を開けた。潤んだ瞳のまま私を見上げると、小さな声で何かを言った。義勇さんの口元に耳を寄せる。
「体が治ったら、俺の故郷を案内させてほしい」
途切れ途切れだれけど、彼は確かにそう言った。私はしかと頷いて、布団の中の大きな手のひらを強く強く握った。
ここにいます、傍においてください。あなたがどんなに酷い人でも、あなたがどんな生まれの人でも、何を考えていても、私が私である限りあなたから離れません、ぜったいに。
私の思いがどこまで伝わったかはわからないけれど、義勇さんは安心したかのようにまた眠り始めた。朝日を受け、珠のように白く輝く顔はまるで産まれたての子供のように見えた、美しかった。