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わらべ歌【冨岡義勇】

第11章 10話


君と俺の仲だというのに、鬼について長い間隠していたのは、悪かった。鬼の存在を知らずに一生を終えられることが幸せかと思っていたが、君には伝えておくべきだったかもしれない。

冨岡とのことについても、あまり力になってやれなくてすまない。うまくいくように、願っているよ。


それを聞いた時私は、急にまだ彼が生きているような感覚に襲われた。だって、最期まで彼は自分より他人のことを優先させていたのだ。出会ったばかりの他人を庇い、今際の際まで友人の私を気遣った。

竈門くんから聞いた彼の遺言は、空中で混じり合い彼の姿形となって紡がれた。あの裏表のない溌剌とした笑顔が、眼前に浮かんでくる。手を伸ばせば触れられるかもしれない、とすら思えた。

亡くなっても、気配として意志がそこあった。目の前の少年が、竈門くんが彼を連れてきてくれた。彼が煉獄さんの思いを受け継ごうとしてくれているのが、ひしひしと感じられた。

「煉獄さんは立派な人でしたねぇ」

まるで、今日は良い天気ですねと世間話をするかのような調子で私は呟いた。竈門くんは、こぼれ落ちそうな大きな瞳をくしゃくしゃにしながら、幾度となく頷いた。

竈門くんの素直で実直なさまに、私は好感をもっていた。煉獄さんが遺言を託したくなるのも納得できる。もう少し、彼と話していたくなった。竈門くん自身と、竈門くんの中にうっすらと残る、煉獄さんの面影と。

思い詰めた表情を晴らしたく思い、煉獄さんとの思い出話、家族の話、いままでに竈門くんがついた任務など、竈門くんに様々な話をするように促した。竈門くんはぽつりぽつりと話し始め、だんだん張り詰めていた糸が緩まるように表情が穏やかになる。

私はお茶を再度注ぐと、竈門くんに勧めた。竈門くんは礼を述べ、湯のみに口をつけた。

「そういえば竈門くんは、煉獄さん以外の柱……と会ったことはあるのですか? その柱、というのはどんな方々の集まりなのでしょう?」
「俺の印象だと、個性が強い方々の集まりなんですけれど、ええと、じ、実は柱の方全員と会ったことはあるんです」と少し気まずそうに頭をかいた後、竈門くんは続ける。
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