第10章 9話
少し分けてください。あなたが抱えているものを、私にも分けて、背負わせてください。あなたのその硬い表情が少しでも解れるようにしてあげたい、つらいことがその身に振りかからないでほしい。義勇さんにとって世界が、もっと良いものになって欲しい。口には出せずに、私はずっと考えていた。
ゆびきり、指切りしたいんです。約束して、義勇さん。私とあなただけは、何があって一緒にいるって。そばにいてあげるから、あなたの人生はもっと楽しいんだって、教えて差し上げるから。あなたが死んだら私も死ぬから、どこまでもご一緒するから、私をそばに置いてください。
――ゆびきりげんまん、うそついたら。
子供の高い声が、どこからか聞こえる。恐らくこれは幻聴か、昔の記憶からのものだ。
いつだって、子供はふたりいる。わたしと、あとひとり。そのひとりは絶対にあなたであってほしいの、義勇さん。
義勇さんと、ひとつになりたかった。私も彼の一部になりたかった。
わたしは彼の顔にぐっと顔を近づけた。唇と唇が触れ合いそうな距離にまで近づく。彼は、流石にそんな気分にはならないのか、私に口付けはせずに顔を背けた。
私は大きな体にもたれかかって、体重を預けていた。とある、画策をした。こんな時だけやけに頭が冴えた。