第9章 8話
「ちょ、煉獄さん。起きちゃいますから……」
「あ、あぁすまない」と笑いすぎて出た生理的な涙を拭いながら、「君は、本当に義勇のことが好きなんだな」と私の頭を撫でた。
乱れた髪を直しながら、ひとつしか変わらないけれど、兄がいたらこんな感じなのだろうか、と想像した。煉獄さんは私の友人で、理解者で、兄のような存在だった。
煉獄さんからは、学んだことがいくつもあった。
食事のマナー、気の遣い方、優しさの質について。そして、伝えたいことは直ぐに伝えないと、一生後悔するということ。
煉獄さんの訃報を聞いたのは、その夜から半月ほど経った時のことだった。永遠なんてないことを知った。