第6章 5話
もういちど、熱さを知った。彼は私にそれを教え込むかのように、数回その行為を繰り返した。唇をただ重ねているだけで、子供のようだと思ったけれど、私を押さえ込む力と唇から伝わってくる熱は、確かに大人の男のそれだった。血の香り、男の汗の香りが強くなる。
瞼を閉じるとまなうらに、幻覚が見えた。幼いころの冨岡さんの、太陽みたいなあどけない笑顔。愛しい、と心の底から思う。知りもしないはずの過去に、思いを馳せている。
熱さによってまた現実に引き戻される。
あつくて、とけそう。頭の中がくらくらする。らいめい、らいめい。わたしたち、いけないことをしている。雷が、なにかを裁く。みのがしてね、みつけないでいてね、と願った。なきそう。ないてしまいそう。