第1章 『最終選別』
次々と襲い掛かって来る鬼達を斬りながら、藍華は次第に楽しくなってきていた。
実戦というのは、どんな修行でも手に入らない経験が積める。
様々な状況を想定して鍛錬した一年間よりも、たった一回の戦闘での経験が大きく成長させる事も往々にしてあるのだ。
けれど勿論、その成長は修行によって鍛え抜かれたからこそできる事なので、どちらが欠けても順番がずれてもダメだが。
藍華はそして、師範としては厳しい千代に合格を貰ったので、後は実戦で経験を積むのみ。
「女カァ…うまそうだなぁ」
「そいつぁ俺の獲物だぜ!」
「アァ?俺のだよ」
藍華の視線の先には三体の鬼。藍華を誰が食うか言い合いをしている。まさに三つ巴。
本来ならこの隙に逃げて、少しでも戦闘を避けるべきなのだろう。そうして生存率を上げる。
けれど藍華は、”夢中になると物凄い集中力を発揮する”のだ。
自分のスキルアップというものに楽しさを見出していた藍華は、完全に夢中だった。
だから─―
逃げるなんていう選択肢は始めから、藍華の頭に無かった。