第1章 『最終選別』
藍華が視線を向けた先には、そっくりな顔立ちをしているおかっぱの二人の女の子がいた。
違いといえば黒髪か白髪かというくらいだ。
「この藤襲山には、鬼殺の剣士様方が生捕りにした鬼が閉じ込められており、外に出ることは出来ません」
「山の麓から中腹にかけて、鬼共の嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます」
「しかしここから先には、藤の花は咲いておりませんから、鬼共がおります」
「この中で、七日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます」
白髪の少女と黒髪の少女が交互に、最終選別について理路整然と述べた。
「では、いってらっしゃいませ」
最後に二人は藍華達を送り出すようにお辞儀をする。
それを皮切りに、集まっていた剣士たちがそれぞれ動き出した。
藍華もそれに続くように歩き出す。
藤の花が途切れる場所までゆっくり歩くのは体力温存のためでもあったが、藍華はそれよりも足の痺れを取るためであった。
(やっぱりしゃがんで待つべきだったかな...)
そんなしょうもない、けれど下手したら命に関わるかもしれない事を考えながら、藍華は藤の花の先を目指す。
──こうして、最終選別が幕を開けた。